早川先輩が死んだ—
昨日まであんなに元気だったのに・・・。
先輩はテニス部のキャプテンで、女子生徒の人気者。品行方正なイケメンだった。それが突然の事故で亡くなってしまったのだ—!
それは全くの不運としかいいようがなかった。いつものように先輩が自転車で自宅迄の帰り道を走っていると、突然雷雨になった。激しい大雨の中、先輩は大きな木の下で雨宿りをしたらしい。そこへ雷が落ちて来て—。
「・・・・・・」
先輩は一瞬にして命を奪われてしまったのだ。その死顔はきれいだった。おそらく自分がいつ亡くなったのかも分からなかったのだろう。
そういう私は、早川先輩をただずっと見つめ続けるだけの存在だった。告白なんてとんでもない—!
勇気のない私にとって先輩は、憧れの人だったのだ。何者にも冒されたくない私だけの王子様だった。
お通夜に参加した生徒たちは皆一様に泣いていた。女子生徒の中には、泣きながら失神する者までいた。気持ちは分かる・・・。私だって、先輩の死に顔を見たときには、倒れそうになったのだから・・・。
白い菊の花に囲まれた先輩の美しさと言ったら・・・。
でも、もうあの笑顔は見られないのね、そう思うと私は居ても立ってもいられなくて、その場をそっと抜け出した。先輩のいない人生なんて、考えられない!もう生きていてしょうがない—そう思ったのだ。
お葬式は滞りなく終った。先輩のお棺はこの地方の風習通り土葬にされた。私たち生徒たちは最期のお別れに行ったが、みんなその早すぎる死を悼んで啜り泣いていた。
でも私ひとりだけは違った。私は土を掛けられる先輩を見ながら決意していたのだ。
「先輩、待っていてくださいね。私が必ず助けにきますからね—」と。
私には一つ秘策があったのだ。先輩を生き返らせたいと。いや、先輩は死んでなんかいないのだ!死んでなんか・・・。だから私が必ず生き返らせる—そう思っていた。
つづく