トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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ホラーな彼氏

「ニャン太を探して」58

ある夜、あまりにも酷く暴れたので、とうとう我慢できずにナナコは初めて救急車を呼んだ。震える指でプッシュボタンを押すと、深夜にも関わらず電話口からは落ち着いたきびきびとした声が聞こえてきた。 「はい、一一九です。火事ですか? 救急ですか?」そ…

「ホラーな彼氏」23

先輩はあの火事のときに、燃え尽きてドクロだけになってしまった。 そして煤だらけの黒いドクロになってしまったにも関わらず、まだ生きていた! だから私が机に向って宿題をしていると、スタンドの上から「ケケケ」と笑い声を立て、「そこ、間違っているぞ…

「ホラーな彼氏」22

焼け爛れた屋敷跡から、阿古屋が逮捕されて、パトカーに乗せられる場面がテレビから流れてきた。 阿古屋は森に迷い込んできた野良犬や野良猫を捕まえては肉屋に卸していたという。 その容疑で逮捕されたのだ。 そしてそれを販売していた肉屋の朝吉も―。 森は…

「ホラーな彼氏」21

私は先輩を貫いた魔法の杖を引き抜いて、高々と掲げた。 「あ、それは―」 阿古屋の顔が青ざめた。 私は大きな声で叫んだ。 「エコー エコー アッサラー!」 風が強くなり、窓ガラスがガタガタ揺れ始めた。 「エコー エコー ゾメラク!」 大釜を茹でている火…

「ホラーな彼氏」20

「え!?でもそんなことをしたら、先輩が死んでしまう・・・」 先輩は首を横に振った。 「いいんだ。それでいい・・・」 そして、 「お前、もう二度と眠っているヤツを起こすなよ」 と言ってフッと笑うとそのまま息を引き取った。 その顔はやすらかだった。 …

「ホラーな彼氏」19

そんな私の目の前に阿古屋が立ちはだかった。 そして私は捕まえられてしまった。 阿古屋は私の羽交い絞めにして、先輩に言った。 「この子の首をへし折られたくなかったら、こっちへおいで!」 「・・・・・・」 先輩は迷っているようだった。 「早くッ!」 …

「ホラーな彼氏」18

トントンと私の足を叩くものがある。 見ると、私の側に倒れている先輩だった。 先輩は私の顔を見て、「にげろ」と声を出さずに言った。 「・・・・・・」 ―でも、先輩。先輩を置いて逃げるわけには・・・。 ―俺は一度は死んでいるんだ。お前だけでも逃げろ。…

「ホラーな彼氏」17

気がつくと、トラックは森の中を走っていた。 すでに辺りは暗くなり、月がでていた。 「・・・・・・」 車が止まると、そこは魔女阿古屋の屋敷だった。 私と先輩はそれぞれ朝吉の両肩に担がれ、屋敷の中へ入っていった。 どさりと床に投げ出されると、そこに…

「ホラーな彼氏」16

先輩は困ったような慌てたような顔で、腹を押さえるが、 それは止まらない。 道行く人が何事かと、鼻をつまみながらこっちを見ていた。 私はなんとかしなければと思いつつも、もう力がでなかった。 私はその場にへたり込んだ。そして祈った。 「神さま、助け…

「ホラーな彼氏」15

学校から離れた所で、電信柱に摑まりながら、 ようやく私たちは一息ついた。 それにしても体が重い。思うように動かない。 息も切れる。膝が痛い・・・腰が痛い・・・。 眼がかすむ・・・。 ハアハア大きく息を付いていた私は、泣きたくなった。 何だかさっ…

「ホラーな彼氏」14

階段から落ちた私を先輩が抱きとめてくれた―。 「せ、先輩・・・」と思った瞬間、私を受け止めた衝撃で、 先輩の左手がポロリ!と取れた。 「ぎゃ~~~!!!」 私たちは同時に叫んでいた。 先輩の手が取れたのだ。なんと、腐っていたのだ。 その声を聞きつ…

「ホラーな彼氏」これまでのあらすじ

こんにちは。 パモン堂です。 連日更新しております、「ホラーな彼氏」ですが、 お楽しみいただけていますでしょうか? さて、明日からいよいよ後半へ移るのですが、 早川先輩…大変な事になってしまいましたねー。 ボロッって何?ボロッって…。(^^;) 主人公…

「ホラーな彼氏」13

放課後—。 長時間堅い椅子に座っていたせいか、腰が痛い。背中も丸くなってしまっていた。椅子から立ち上がるときに、つい 「どっこいしょ!」と言っている自分に気がついた。 「—!」唖然とした。 朝よりおばあさん度が増している〜。そう言えば、目がかす…

「ホラーな彼氏」12

クラスの友達は私の顔を見て、 「なあに、その鬘〜?先生にバレたらチョーヤバいんじゃん!」と言ったが、顔の皺をみると、口を噤んでしまった。そしてコソコソと三、四人で固まって私の方をチラチラみていた。 「・・・・・・」 無理もない。一夜経ったらお…

「ホラーな彼氏」11

「真希、何してるの?早くしないと学校遅れるわよ!」 母親の声がドアの外からした。 でも、こんな格好では出て行けない。 ど、どうしよう・・・。 私は側にあったバスタオルで髪を覆って出て行った。 そして、母親の部屋から鬘を拝借すると、それを被って登…

「ホラーな彼氏」10

翌朝、チロのワンワン吠える声で目を覚ました。 「なによぉ、チロ、うるさいわね・・・」と寝ぼけながら目を覚ますと、ギョッとした。 な、なんと、そこにはあどけなく寝ている先輩の顔があったのだ! 私は恥ずかしくなって思わず顔を引いた。 は、早川先輩…

「ホラーな彼氏」9

家へ戻るとそっと二階の自分の部屋へ行き、窓から先輩に入ってもらった。 「お前ん家は二階の窓から入るのか?」 先輩はやれやれという顔で上ってきた。 「いえ、そうじゃないんですけど、バレるといろいろやっかいなので、先輩だけはここから出入りしてくだ…

「ホラーな彼氏」8

「どういうこと?まるで先輩じゃないみたい?」 「さあね。時々あるのよね。なんかリセットされるというか、別人になっちゃうっていうことが」 ええ〜っ!!じゃあ、これは先輩の姿をした別人なのォ〜? 「まあ、いいじゃない?大好きな先輩が生き返ったんだ…

「ホラーな彼氏」7

「ここはどこだ?」 早川先輩はキョロキョロして言った。 私は、すぐに側に飛んでいった。 「先輩、大丈夫ですか?体調はどうですか?」 先輩は私の顔を見て、驚いて言った。 「あれ?お前、一年E組の、相沢真希?何でここに?」 私は嬉しくてバンザイをし…

「ホラーな彼氏」6

「キャッ!」 阿古屋さんが叫んだとき、風の恐ろしい唸り声に私は思わず耳を塞いでしゃがんでしまった。 「・・・・・・」 しばらくそうしていただろうか?気が付くと風は止んで静かになっていた。 そのとき、声がした。 「あれ?ここはどこだ?」 「—!?」…

「ホラーな彼氏」5

私は涙を拭いて立ち上がると、棺の蓋をこじ開けて、中から先輩を抱き起こした。 「む—!?」 お、重い・・・。先輩はびくともしない。しかも体が堅くて持ち上げられない。 私は梯子を下まで下ろすと、それに先輩の体を括り付け、下から少しずつ持ち上げてい…

「ホラーな彼氏」4

「—!!」 私は心臓が止まりそうになった。え!?若さが欲しい?ど、どうしよう・・・私まだ十六よ、若さをもっていかれたら、おばあちゃんになっちゃうの〜!? 浦島太郎なのォ〜?私が躊躇していると、 「何?嫌なの?なら、この話しはおしまいね」 そう言…

「ホラーな彼氏」3

それでも阿古屋さんは、大広間と見まごうばかりの居間で私の話しを聞いてくれた。 突然死んだ早川先輩のこと。その先輩を生き返らせたいと思っていること。魔女である阿古屋さんなら、それが出来ると思っていること、などを私は一気に喋った。 私の話しをじ…

「ホラーな彼氏」2

私は近所の森に住む魔女の阿古屋さん家に向かった。 阿古屋さんは三年前にこの森に住み着いた五十代の女性。 真っ赤な髪に高い鷲鼻、突き出た頬骨、裾を引きずる黒いドレス・・・と、その異様な風貌に、近所の人たちは彼女のことを魔女だと噂した。 実際、阿…

「ホラーな彼氏」1

早川先輩が死んだ— 昨日まであんなに元気だったのに・・・。 先輩はテニス部のキャプテンで、女子生徒の人気者。品行方正なイケメンだった。それが突然の事故で亡くなってしまったのだ—! それは全くの不運としかいいようがなかった。いつものように先輩が自…