トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「便所の神様」3

まずは、床に積み上げあるマンガ雑誌を片付けて床が見えるようにした。

帚で天井や窓の蜘蛛の巣を払い、壁の落書きをごしごし擦って消した。

床の埃を帚で取ると、茶色や黄色のシミを雑巾で何度も何度も綺麗になるまで拭き取った。

 

 

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最初は嫌々ながらやっていた亘であったが、

少しずつ綺麗になっていくうちに、

「もう少し、もう少し」と力をこめていった。

 

しかし、長年放置されていた汚れはなかなか取れずに、ようやく綺麗になった頃には、すっかり陽が傾きかけていた。

 

やれやれと亘が自分の部屋で、汗で濡れた服を着替えていると、携帯が鳴った。

それは、昨日面接で落とされた会社の人事担当者からだった。

 

「あー、もしもし。君の覇気のない態度が我が社の社風に合わないと、採用を見送った者だけれど、人事部長がそんな人材もたまには必要なんじゃないかとおっしゃって、急遽君を取ることになりました。とりあえず、おめでとう!」

「ええっ!? 本当ですか? 有り難うございます! 頑張ります」

亘は電話を切ったあと、

「やったー! やったー!」と小躍りした。

そして、これもみんな便所の神さまのお陰だと思った。

 

 

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あの人、本物の神さまだったんだな、疑ったりして、ごめんな、と心の中でつぶやくのだった。

 

 

そんな訳で、無事に就職を果たした亘は、入社後も何か行き詰まると、トイレ掃除にいそしんだ。

すると、不思議なことに、今まで上手くいかなった物事も、自然と回っていくようになる。

「これはいい!」

亘はより一層、トイレ掃除に励むようになった。

 

 

つづく

 

 

 

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