今や先代の後を継ぎ、社長になった亘は、『トイレ掃除でウン掴め!』や『ウンチの中に幸運が』などの著書を多数書き、一躍有名になっていた。
マスコミにもたびたび登場する、成功哲学のカリスマとしてもてはやされたのだ。
トイレ掃除の輪は、全国に広がり、人々は目をギラつかせながら掃除にいそしんだ。
少しでも汚れたトイレがあれば、先を争って掃除をし、ご利益を得ようとした。
やがて日本国内で、汚いトイレを探すのが難しくなると、その精神を受け継いだ企業戦士たちが世界中に散らばってゆき、今度は世界的規模で、トイレ掃除が展開されるようになっていく。
すると世界中の人々も日本流のウンの上げ方、トイレ掃除をすると幸運が訪れる、ということを信じ始め、何かにとりつかれたようにトイレ掃除に夢中になっていった。
そうこうしているうちに地球規模で、すでに欲の塊となった人々が、目を異様に輝かせながら、楽し気に、
「ウンチ掴んでウン掴め!」
などと言いながら掃除をする姿が、ここそこで見られるようになったのだ。
つづく