クラスの友達は私の顔を見て、
「なあに、その鬘〜?先生にバレたらチョーヤバいんじゃん!」と言ったが、顔の皺をみると、口を噤んでしまった。そしてコソコソと三、四人で固まって私の方をチラチラみていた。
「・・・・・・」
無理もない。一夜経ったらおばあさんなんて、まるで浦島太郎の世界だよ。
と私は涙が出てきた。
休み時間に担任から呼び出しを喰らった私は、恐る恐る職員室に向かったら、
「何か悩みがあるのか?遠慮なく先生に相談しなさい」と言われた。
「いえ、別に・・・」と即座に否定したけれど、
先生は疑わしそうな目で私を見ていたっけ。
ふと、窓の外を見ると、トンレチコートに帽子、サングラス姿の男が校庭を歩いていた。それを見たとき—
「せ、先輩〜!」と思わず身を乗り出してしまった。
驚く先生に一礼して、私はすぐに校庭へ下りていった。
先輩、何でこんなところに〜?
あれほどこないで、って言ったのに。
下へ下りると怪しいトレンチコートの姿は見えなくなった。
「あれ?」と捜すと、テニス部の部室のドアが開いていた。
中を覗くと、先輩がラケットを手に素振りの練習をしていた。
「先輩・・・」
「おっ、相沢!いや、ちょっとね。俺、一度やってみたかったんだよな。裸にテニス」
そう言ってコートをバッと脱ぐと、そこはスッポンポン!
「いやあ〜〜〜!」
私が叫び声を立てると、ワハハと笑って、前を閉じた。
「冗談だよ、冗談。なんだかテニスがむしょうにしたくてな。俺、ここで誰にも見つからないように、練習してるから、心配するな」
心配するな・・・と言っても、コートの下は裸の足にお父さんの革靴を履いている。
充分、怪しい・・・。
でも先輩、死んでもテニスは続けたかったのかしら・・・?
私は先輩がなんだか可哀想になってしまった。
帰ったら、うんとかまってあげなきゃ、と思った。
つづく