先輩は困ったような慌てたような顔で、腹を押さえるが、
それは止まらない。
道行く人が何事かと、鼻をつまみながらこっちを見ていた。
私はなんとかしなければと思いつつも、もう力がでなかった。
私はその場にへたり込んだ。そして祈った。
「神さま、助けて・・・!」
「お前ら、どうした?」
ふいに声がして私は顔を上げた。
白い軽トラックが止まって、中から大きな丸顔の若い男が見ていた。
そして、
「こ、これは・・・!」は絶句した。
「あ、朝吉さん・・・」
私は涙声になった。
肉屋の朝吉はまだ若いのに、でっぷりと肥え太り、
いつも血のついた薄汚れたエプロンを掛けていた。
顔の肉に押しつぶされたような細い眼が冷たく光り不気味だった。
でも今はまるで救世主に見えた。
「た、助けて・・・」
私は車から降りてきた朝吉に助けを求めた。
しかし朝吉は私の手を振り払い、あろうことか雨靴を履いた足で私を蹴ったのだ。
「グェ―」
道路に倒れ込んだ私を、朝吉は軽がると担ぎ上げると軽トラックの荷台に放り込んだ。
薄れゆく意識の中で、私は朝吉に捕まえられそうになって抵抗する先輩を見た。
しかし、捕まえられ、かき集められた内臓と共にやはり荷台に放り込まれていた。
そしてそのまま軽トラックは走り出してしまった。
つづく