それでも阿古屋さんは、大広間と見まごうばかりの居間で私の話しを聞いてくれた。
突然死んだ早川先輩のこと。その先輩を生き返らせたいと思っていること。魔女である阿古屋さんなら、それが出来ると思っていること、などを私は一気に喋った。
私の話しをじっと聞いていた阿古屋さんだったが、一通り聞くと、
「う〜・・・」と言ったっきり、頭を抱えた。
「あなた、本気で私が死人を生き返らせると思っているの?」
「はいっ!」私は満面の笑みで答えた。
「だって、阿古屋さんは魔女でしょ?みんなそう言っていますよ」
「う・・・」再び阿古屋さんは頭を抱えた。
「そんな噂が立っていたなんて・・・」
「で、でも、実際に帚に乗って空を飛んでいるのを見たという人もいますよ、肉屋の朝吉さんですけど・・・」
「朝吉・・・・・・」
絶句して動かなくなってしまった阿古屋さんに、私は急いでソファから下りて、その足にしがみついた。
「お願い、阿古屋さん、先輩を生き返らせて・・・!先輩は私にとって、いいえ、この町にとって、とても大事な人なんです。だからお願い・・・」
最後は涙声になってしまった。
阿古屋さんは、早川先輩がどんなにステキな人か知らないのだ。将来の日本を背負って立つかも知れない人なのに・・・。なのに・・・こんなところで死なせる訳にはいかないのだ・・・。
しばらく考えていた阿古屋さんだったが、決心したように顔を上げた。
「いいわ。それじゃあ、その何とか先輩とか言う人を助けてあげましょう」
「本当ですか!?」
私は涙でぐしょぐしょになった顔を上げた。
「その代わり」
阿古屋さんは遮った。
「私に何をくれるの?」
「何って—?」
「それだけの大仕事をするのよ、そんな私に、あなたは何をくれるの?」
「・・・・・・」
う〜ん・・・私は考えた。てっとり早く現金かな?私は自分の預金通帳を思い浮かべた。お年玉をずっと貯め続けていたので、二十万くらいはあるはずだ。
「二十万くらいでいいですか?」
おずおずと聞いてみた。
「はッ?」
阿古屋さんは即座に撥ね除けた。
「そんなもんいるかいッ!?」
「す、すいません、それじゃあ・・・」
「そうねぇ、私が欲しいのは—」
阿古屋さんの目が光った。
「あなたの若さね」
つづく