トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ホラーな彼氏」17

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気がつくと、トラックは森の中を走っていた。

すでに辺りは暗くなり、月がでていた。

 

 「・・・・・・」

 

車が止まると、そこは魔女阿古屋の屋敷だった。

私と先輩はそれぞれ朝吉の両肩に担がれ、屋敷の中へ入っていった。

 

どさりと床に投げ出されると、そこには高校の制服を着ている若返った阿古屋がいた!スカート丈はおもいっきり短かかった。

手にはチョコバー、耳にはヘッドホーンをして、ノリノリで踊っていた。

 

朝吉が怒鳴った。

 

「なんだよ、これは!?人肉を頼んだら、これか?ババアと、腐りかけか?あぁ?」

 

阿古屋さんは、ヘッドホーンを外すと、朝吉を見て、私たちを見た。そして、

 

「いいじゃない!これでも苦労したのよー。大丈夫。年取った方がダシが出るって。それに腐りかけの方がもっとおいしいって」と言った。

 

おい、おい・・・!冗談じゃないよ。私らを食うつもりかあ・・・!?こいつら。

 

「犬猫じゃあもう客は満足しねぇんだよ!俺の店は珍味で売ってんだからよ。人肉饅頭ぐれぇじゃねぇと」

 

文句を言う朝吉に、阿古屋は口を尖らせた。

 

「とりあえず味見してから、そんなことお言いよッ!」

 

「分かったよ、しょうがねぇな・・・」

 

ぶつぶつ言いながらも、朝吉はお湯の張った大きな釜に、下から火を燃やし始めた。

 

 

つづく

 

 

 

嫁の家出 (実業之日本社文庫)

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  • 作者:中得 一美
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 文庫