トントンと私の足を叩くものがある。
見ると、私の側に倒れている先輩だった。
先輩は私の顔を見て、「にげろ」と声を出さずに言った。
「・・・・・・」
―でも、先輩。先輩を置いて逃げるわけには・・・。
―俺は一度は死んでいるんだ。お前だけでも逃げろ。
私が迷っていると、朝吉がやってきて、先輩を抱えて釜の方へ連れて行った。
釜の湯がぐらぐらと茹っていた。
「・・・・・・」
私はハラハラした。朝吉は先輩を釜に入れようとした。
その時、先輩はパッと跳ね起きて、朝吉の肩から飛び降りた。
そしてその衝撃でバランスを崩した朝吉の体を先輩は思いっきり突き飛ばした。
「ぎゃ~~~!!」
朝吉は湯気の立ち上る大釜に浸かると、
「あちィ、あちッ!!」
と、すぐに飛び出してきた。
ぴょんぴょん飛び跳ねる朝吉を横目に、先輩は私を振り向き、「逃げろ」と叫んだ。
「―!」
私は飛び起きて、ドアをめがけて走り出した。
だけど、息が切れる。眼がかすむ・・・。
つづく