トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ホラーな彼氏」19

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そんな私の目の前に阿古屋が立ちはだかった。

そして私は捕まえられてしまった。

 

阿古屋は私の羽交い絞めにして、先輩に言った。

 

「この子の首をへし折られたくなかったら、こっちへおいで!」

 

「・・・・・・」

 先輩は迷っているようだった。

 

「早くッ!」

 阿古屋が怒鳴った。

 

「・・・・・・」 

先輩はゆっくりと阿古屋の方に近づいてきた。

 

阿古屋は壁に立てかけてあった魔法の杖を掴むと、

それを先輩めがけて投げつけた。

 

「うっ!」

杖は先輩を串刺しにし、魔方陣の描かれた床へ突き立った。

 

「先輩ーッ!!」

私は阿古屋の手を振りほどき、先輩に駆け寄った。

 

先輩は切れ切れの息だった。

私の目から涙がこぼれた。

 

「ごめんなさい、先輩。私が生き返らせなければ、こんなことにはならなかったのに・・・。本当にごめんなさい・・・」

 

床に貼り付けられた先輩はそれを見て、微笑んだ。

そして、右手でそっと私の涙をふき取った。

 

「・・・先輩」

先輩は昔のように私の王子さまだった。優しい王子さまだった。

 

私は先輩の手を握った。

先輩が何か言ったようだった。

 

「え?」

私は耳を近づけた。

 

「魔女の呪文・・・元に戻せ」

そう先輩は言った。

 

つづく

 

 

嫁の家出 (実業之日本社文庫)

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  • 作者:中得 一美
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 文庫