トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」15

 外飼いになると、いろいろと不都合なことも起きて来た。

 

 ツトムがある日、いつものように、ニャン太の耳掃除をしていると、そいつは発見された。それは、毛の中でピョンピョン飛んでいる小さな茶色い虫で……。

 つまり、そう、ノミだった。

 

 慌てたナナコは、ニャーニャー鳴き喚くニャン太を、急いでお風呂に入れたが、ノミの勢いは一向に衰える気配がなく、結局はまた動物病院へと連れて行くことになってしまった。

 病院で再び蚤取り薬を付けてもらい、ようやく落ち着いたが、外へ出している以上こういったリスクとは常に隣り合わせだった。市販の蚤取り首輪を買って来てニャン太の首に取り付けたが、いかんせん、その首輪の色が蛍光ピンクしかなく、最近ぶくぶくととみに太って来たニャン太にはまるで似合っていなかった。
 

 それでもナナコたちは、ニャン太の外飼いを止めなかった。一度外の味をしめたニャン太が、室内だけで大人しくしている訳はなかった。野沢家の飼い猫は、いつの間にかアパートの周り半径500mを縄張りとしてのし歩くようになってしまったのだった。

 

 夕方、ナナコが仕事から帰ってくると、よく遠くの畑から、砂塵が巻き起こるのが見えた。何事かと目を凝らして見てみると、それはニャン太で、砂塵を巻き上げ猛烈な勢いでナナコの方に向って走ってくるのだった。

 

 ナナコが喜んで「ニャン太!」と、両手を広げて待っていると、ニャン太はそれには目もくれずその脇を猛スピードで駆け抜けていく。あれ? と拍子抜けしたナナコが振り返ると、ニャン太は急ブレーキを掛けた車みたいに、急停止して、こちらを見上げた。

「ニャア」

 

 それがおかえりという合図なのだった。 

 

 

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つづく