最近のリョーヘイはやたら活発でハイテンションな日もあれば、日がな一日ぼんやりした表情で縁側に座っている時もある。
ナナコには予測不能だった。
車を出してなどと気軽に頼める状態ではなかった。
ナナコは、リョーヘイの一気に年をとり、人を寄せ付けないような憮然とした無表情な横顔を思い出していた。
「……」
突如、ナナコの中に激情がほとばしった。
一体、いつまで、
一体、いつまで、
こんなことをすればいいの……!
それは振り絞るような声だった。ナナコは自分の声に我に返った。
しかし、通りは静かだった。人っ子一人通らずに、そこはうっすらと夕焼けに染まっていた。
「……」
ふいに、ニャーという鳴き声が聞こえてきた。
ナナコが驚いて顔を上げると、住宅街の中を一匹の猫がこちらへ向かって走って来るのが見えた。
思わず周りを見回すが誰もいなかった。
猫はまっすぐナナコめがけて走ってきたのだ。
それは茶色のトラ猫だった。
しっぽは短くくの字に曲がっており、近づいてくる額にはまるで人の目のような形の模様がついていた。
思わずナナコは「ニャン太?」と呼んだ。
猫はナナコの呼びかけに「ニャー」と大声で答えた。
まさか、ニャン太? 本当に? お前生きていたの?
半信半疑のままナナコは足元にじゃれ付いている猫をしゃがみ込んで撫でた。
見ればみるほどニャン太に似ていた。
違うのは、家に居たときよりも、清潔できれいだったこと。
ピンク色の蚤取り用首輪ではなくて、赤くてかわいいバンダナの首輪がされていたこと、そして以前より痩せていたことだった。
「……」
つづく