トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」61

翌日、ナナコは仕事を休んだ。


もう限界だった。もう立ち上がる気力すら残ってはなかった。台所には夕べの暴れた痕跡があちこちに残っていた。

 

割れた皿や調味料、飛び散ったケチャプの汁、食べ残しのおかず、引きずり倒された電子レンジ、穴のあいた食器棚……もううんざりだった。

 

連日深夜の大暴れは、ナナコを精神的にも肉体的にも痛めつけていた。

ナナコは頭から布団を被った。とにかく身体を休めたかった。

 

いつまた起きるかも知れない戦闘に備えて、力を蓄えなければならなかった。

 

けれど、それがいつ終わるのか誰にも分からなかった。まるで不毛な戦いだった。

 

そしてカーテンから漏れ入る明るい日差しと、そんな高ぶったナナコの神経では、とうてい眠ることなど出来やしないのだった。

 

「……」

 

ナナコは諦めて布団から出た。そして、身支度を整えて、リョーヘイが起きるの待った。

 

じっと待つ。ただ待った。

 

そして、今日こそははっきりさせねばならなかった。

 

一体何が起きているのかを。私達家族に一体何が起きているのかを。

 

「ニャア」いつの間にかニャン太が来て、ナナコの膝の上に座った。

 

ニャン太は明け方近くに帰ってきて、いつものように玄関脇に置いてある椅子の上で寝ていたが、今日はナナコが居るので、どうやら甘えに来たようだった。

 

猫アレルギーと診断されてから、ナナコは極力ニャン太に触らないようにしていた。

 

湿疹は病院から貰った薬ですぐに治ったが、家の中がこんな風になっているのに、ペットの世話までとても手が回らないという気がしていた。

 

「……」

 

ナナコはニャン太の頭を撫でた。

半野良の自由猫ニャン太は、いつでも好きな時に出て行っては帰って来たが、こんな時は主人の苦境が分かるのか、いつまでも寄り添うようにして喉を鳴らしていた。

 

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つづく