トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」116

その骨ばった猫の背中を撫でながら、ナナコはなんだか切なくなった。

 

あれから八年も経っているのだから、ニャン太はもう十歳のおじいさん猫になっている筈だった。

 

けれど、こうして元気で相変わらず外で遊んでいられるのは、よほど大切にされ可愛がられている証拠だった。

 

「ニャン太、お前元気だったかい? いい人に拾われたんだね」

 

ナナコがそう声を掛けると、ニャン太はニャー、ニャーと鳴きながら、ナナコの体にいつまでも自分の頭をこすりつけていた。

 

だがやがて、ニャン太はナナコの顔を見上げると、スタスタと行ってしまった。

そうして、一軒の家の前まで来ると、門柱に飛び上がり、ニャアと一声鳴いた。

 

すると、それが合図となって、白い扉が開き、ニャン太は中へと入っていった。

 

「……」

 

ナナコはその様子を見ながら、いつまでもその場に立ち尽くしていた。

ナナコの目からはいつの間にか涙が溢れてきていた。

 

ニャン太、生きていたんだね、幸せだったんだね、大事にされていたんだね、良かったね、ニャン太……。

 

 

ナナコはなんだか一つ肩の荷が下りたような気がした。

 

思い直して、また重い買い物袋を提げると歩き出し、先ほどのニャン太が消えた家の前まで来ると、黙って頭を下げた。

 

ありがとうございます。

ニャン太を拾ってくれて。

大切にしてくれて、ありがとうございます。

 

そう心の中でお礼を言った。

 

いつの間にか、空気が少し涼しくなっていた。

 

蜩が鳴いている。

 

夕日が優しげに住宅街をピンク色に染めていた。

 

それを眺めながら、もう一度、やってみようかな、と、ふとナナコは思った。

 

 

私とリョーヘイとツトムの三人で、

もう一度、もう一度だけ、やってみよう……と、

そんなことを思うのだった。

 

                   了

 

                                                              

 

※長い間、お読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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