リョーヘイは相変わらず、ひとしきり天井に向かって、「出て来いーッ! バカヤローッ!」と怒鳴った後は、ナナコが隠したボールの代わりに、今度は箒を持ち出してきては、天井をドンドンと突くのだった。
「やめて、やめて」とナナコが制すると、その手を振りほどき、次に台所へとふらふら向かってゆく。そして、さほど広くもないダイニングキッチンのテーブルの上の、ごちゃごちゃしたもの―それは大抵醤油差しや晩のおかずの残り物や箸立てだったりするのだが―を片手で薙ぎ倒す。
その物が壊れるすさまじい音やナナコの悲鳴に、リョーヘイは満足するのだった。
そして今度は傍らの冷蔵庫に向って、「何見てんだよ、何見てるって言ってんだよッ!」と叫ぶなり、いきなり蹴りを入れ、その上に乗せてある電子レンジを引き摺り下ろすのだった。
こうなるとナナコはもう手が出せなかった。ただただ震えながら見守るしかないのだった。
つづく