ナナコだってリョーヘイのアルコールの問題に、今まで手をこまねいていた訳ではない。
リョーヘイは酷い時には明け方近くになるまで飲み続け、酔いつぶれるようにして寝入るのだ。当然朝は起きられず、遅刻が続くようになっていた。
遅刻だけならまだしも、そのままずるずると欠勤になることもよくあった。遅刻の電話を頻繁に入れていたナナコも、欠勤があまりに続くと、さすがに言い訳もできず、だんだんと電話をするのが億劫になってきた。
そこで連絡も入れずに放っとくと、今度は職場から「大丈夫?」と電話が掛かってくるのだった。
ナナコは、リョーヘイにアルコールを止めて欲しかったが、一日、二日は、止められても、次の日にはまた浴びるように飲んでしまう。ナナコ自身も、夕食後に飲むビールは止められなかったので、完全に家の中から酒を排除することは難しかった。
それに、リョーヘイが禁酒することで、自分までも楽しみを奪われてしまうことに、ナナコは憤ってもいたのだ。
入院をさせて断酒することも考えたが、そんな話をリョーへイは一笑に付した。リョーへイにとって、酒をやめることなど鼻っから頭になく、このまま何となく会社も家庭もやり過ごしていければいいと考えているようだった。
つづく