リョーヘイは駐車場で、一人二階へ向かって、
「テメェ、いい加減にしろッ! 早く降りてこいッ! 降りて来いったら!」などと叫んでいたが、もちろん二階の住人が降りてくるはずもなく、手持ち無沙汰にしていた。
そこで今度は小石を拾っては二階に投げて、「オイ、オイったら」とまた叫ぶが反応がないので、頭に来て二階へと続く外階段をふらふらと上り始めた。
ちょうど外へ出たナナコがそれを見て慌ててとめるが、リョーヘイはその手を振り払い、一段一段上っていった。
「早く、早くお巡りさん来てッ!」
ナナコはリョーヘイにしがみつきながら、そう祈った。
二階の部屋の前まで来ると、リョーヘイはドンドンドンとドアを叩いた。
「出てこいッ、コラッ! 出て来いって言ってんだよッ」ナナコは口に指を当てて小声で「シーッ、シーッ」と言った。
「もういいでしょう。早く帰ろう、ね」そう宥めてリョーヘイの身体を支えながら、階段を下りようとするが、リョーヘイはその場に座り込み、
「もう、いいよ。お前、なんだよ、俺の邪魔ばかりしやがって」とつぶやいた。
「……」
「もうお前はいい。お前なんか嫌いだ。あっちへ行け」そう言ってナナコを手で追い払おうとする。ナナコは焦った。リョーヘイを一刻も早く部屋へ戻したいのに……。
その時、ナナコの足元で「ニャー」という声がした。
つづく