「えっ?」
見ると、ニャン太だった。ニャン太が階段を上ってリョーヘイの足元で、身体を摺り寄せていた。
「ニャン太……」
ニャン太は、心配そうにリョーヘイの側から離れようとしなかった。ウロウロしながら見守っていた。しかしリョーヘイにはその姿は見えていないようだった。
ナナコはニャン太に勇気づけられリョーヘイに言った。
「もう行こう。ね」
「……」
その声に促されるようにしてリョーヘイは立ち上がった。足元の覚束ないその身体を支えながら階段を一歩一歩下りてくると、黒い人影が近づいてきた。
「大丈夫? ダンナどうしたの?」
それはお向かいの庄田さんだった。
「すみません。ご迷惑お掛けしています。ちょっと酔っ払っちゃって」
ナナコがそう謝ると、庄田さんは、
「一人で大丈夫?」と尋ねた。
「うん、大丈夫です。警察を呼んだので、もう来ると思うので」
「そう」
それでも庄田さんはしばらく去りがたくしていたが、「じゃあ何かあったらすぐ呼んでね」そう言って帰って行った。
「……」
つづく