重苦しい食事が終わると、ナナコはまだ食卓にしがみついているリョーヘイを残し、さっさと片付けてしまった。
そして、ツトムと二人で寝室へ入った。ここ最近またアレが始まっており、寝不足だった。少しでも寝ておかなければ体力が持たなかった。
うとうととしかけた時、激しい音で目が覚めた。
「出て来いーッ! コラーッ! テメェはそんなに気の小っちぇ男かよ。さっさと降りて来いッ! 降りて来て、勝負しろッ!」
リョーヘイだった。また見えない敵に向かって吠えているのだった。
ガンガンガン!
激しい音は、リョーヘイが箒の柄で天井を突いている音だった。
天井板が震えていた。
「もういい加減にしてよッ!」
ナナコは起き上がりそう叫んだ。
もう大声を出す事に何のためらいもなかった。
おそらくリョーヘイが暴れていることは、隣近所にも知れ渡っている事だろう。
特に一番の被害者である二階の住人が知らない筈はなかった。
だが、彼は大家や不動産屋に告げ口することなく、ひたすら耐えていた。
理不尽な都会の隣人に。
ナナコはそれをいい事に、今ではリョーヘイを平気で怒鳴りつけるようになっていた。
リョーヘイに身体ごとぶつかっていって制するということは、もはや無理だった。
リョーヘイは百八十センチ近くの大男で、力も強いのだ。百五十五センチ足らずのナナコなどがとても敵う相手ではない。
つづく