それから何年かがあっという間に過ぎていった。
ツトムは今年中学を卒業した。
ツトムは、中学二年に進級した頃、不登校になった。もうお腹が痛いなどと言わずに、部屋から出てこなくなった。
そしてクラスメートや担任の先生が訪問した翌日だけは学校へ行ったが、すぐに行かなくなる。その繰り返しだった。
ナナコは仕方がないと諦めていた。
あの父親の子だもの、仕方がないと。ツトムはリョーヘイの背中を見て育ってきたのだから。
一番の被害者はツトムだったのかもしれない。
卒業証書は他の不登校の生徒たちと一緒に校長室で手渡され、複雑な思いでナナコはそれを見ていた。春からは定時制高校へ通う予定だった。
リョーヘイは、会社を休みながらもなんとか出勤していたが、ついに半年前から休職することになってしまった。
どうしても朝起きられなくなってしまったからだ。
傷病手当を貰えることになったが、生活は一挙に厳しくなった。
最初のうちは、仕事へ行かなくていいと言われて気が楽になったのか、一日中ジョギングを楽しんだりしていたが、やがて何日も寝込むと、部屋から出てこなくなった。
時々ナナコがそっと部屋を覗いては、生きているのか死んでいるのかを確かめなければならなかった。
ナナコはそんな中で一人仕事を続けていた。ツトムが不登校になった時、いっそ仕事を止めようかとも思ったが、ハナエさんから、
「今仕事を辞めるのは良くないよ、二人ともキツイ思いをするよ」と言われ、そのまま続けることにした。
つづく