トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」103

家探しは難航した。

そしていまや完全にリョーヘイは心を閉ざしてしまっていた。

 

リョーヘイは能面のような顔つきになり、時折口に出る言葉は辛辣な皮肉だけだった。

そんなリョーヘイが特にニャン太には激しい攻撃性を剥き出しにして、ニャン太が部屋へ入ろうとすると、「入るなッ、あっちへ行け」と身体をつまんで投げ飛ばすようになっていた。

 

初めてそれを見た時には、ナナコもツトムも声を失った。何故なら、ニャン太が空中をピョーンと弧を描きながら飛んでいったのだから。

 

「―!」

 

ナナコが思わずツトムを見ると、ツトムは色を失っていた。

これはマズイことになったと思った。リョーヘイは本気なのだ。本気でニャン太を追い出す気なのだ。

だが、それと同時に、これは見せしめだとも思った。俺に逆らうとどうなるか、分かったか? というリョーヘイの暗黙の脅しでもあるのだとナナコは感じていた。

 

「止めなさいよッ」

 

ナナコが言うと、リョーヘイはプイと横を向いてしまったが、それ以後もリョーヘイはニャン太が家の中へ入ってくると、玄関のドアから追い出すようになった。

 

その度にニャン太が、目の前をピュンと飛んでいくのを、ナナコはハラハラと見守っていたが、次第にもう止めなくなってしまった。

 

リョーヘイとニャン太の争いに疲れてしまったということもあるが、猫で済んでいるなら……という思いもあったのだ。まだ猫で済んでいるなら、子どもにいかないのなら……という気持ちがどこかにあるのも事実だった。

 

ナナコの手にはいつの間にか、また猫アレルギーの湿疹が出てくるようになってしまった。ニャン太は次第に家に寄り付かなくなった。

どんなに遅くなっても、夕食時にはきちんと帰って来ていたのに、一日置き、二日置きとだんだんと帰ってくる感覚が長くなっていった。

 

そして、たまに戻ってきても、夕食を食べ終わると、そそくさとまた外へ出て行くのだった。

 

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つづく

 

 

 

季節ですね~。(*´Д`)