次第に翔くんは変わり者扱いされていきました。それは三歳で入った幼稚園でも同じことでした。
翔くんには周りの友だちがしている遊びなんて、馬鹿馬鹿しくてやりたくありませんでした。
だから、先生からの連絡帳にはいつも、
「今日も隅っこでひとり、天井に向かって喋っていました」とか、
「今日もお遊戯を嫌がって、泣いていました」
などと書かれてしまうのでした。
翔くんはひとりで何でも出来たし、それに第一自由にやりたいのです。強制なんかされたくなかったのです。
だから、みんなでやるお歌やお遊戯なんて、アホらしくて、滑稽で、やってなんかいられなかったのです。
逆に園のお友だちを、「よくやるなあ」と冷めた目つきで眺めていたのでした。
でも先生や友だちは、そんな翔くんが理解できずに、いつもクラスの和を乱す彼に困っていました。
あまつさえ、何もない空間に向かって、ひとりで楽しそうに話す翔くんには、気味悪さまで感じていたのでした。
そのせいでしょうか。
気がつくとまた、ママはため息ばかりつくようになっていました。
口では、いくら「この子は自由にやらせていますので」と園長先生に言ったとしても、その実、ママが怒っているのが翔くんにはよく分かりました。
なぜなら例の夜叉が、再び翔くんには見えたからです。
ママの後ろに恐ろしい顔をした鬼が、真っ赤な口をカッと開けているのが見えたのです。そして、ママがこちらを向いたとき、夜叉も一緒に振り返り、その動かない目で翔くんをじっと睨みつけるのでした。
それを見ると翔くんは、どうしていいのか分からずに、悲しくなるのでした。
ママはボクのことが嫌いなの。
ボクは悪い子なの……。
つづく
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