「—!!」
私は心臓が止まりそうになった。え!?若さが欲しい?ど、どうしよう・・・私まだ十六よ、若さをもっていかれたら、おばあちゃんになっちゃうの〜!?
浦島太郎なのォ〜?私が躊躇していると、
「何?嫌なの?なら、この話しはおしまいね」
そう言って阿古屋さんは背中を向けてしまった。私は慌てて言った。
「い、いえ、それでいいです!私の持っているものでよければなんでも差し上げます。だから、先輩を生き返らせてくださいッ!」
阿古屋さんはにやりと笑った。そして私に顔を近づけて
「約束よ。その何とかと言う先輩を生き返らせたら、あなたの若さを頂くわよ」と言ったのだった。
私は恐怖で思わずごくりと唾を飲んだ。チロが足元で「ワンワン」と吠え立てた。でも、仕方ない—これも先輩を生き返らせる為だ。私は覚悟を決めたのだった。
翌日、私は阿古屋さんの指示で、埋葬された先輩を掘り出す事になった。
満月の晩だった。
その月明かりのもと、私はつるはしとスコップを振るった。こんなことなら、田舎のおじいちゃんの所の畑仕事をうんと手伝っておくんだった。私は何度もそう後悔しながら、土を掘り返していった。
何時間経ったことだろう?ようやく先輩の棺につるはしが当ったときの喜びと言ったら・・・。私はどきどきしながら、土をどけてガラスの小窓から先輩の顔を覗いてみた。
先輩は穏やかな優しい顔で眠っていた。白装束を着て、白い菊の花束に囲まれていた。
「・・・・・・」
それをじっと見つめているうちに、私はそっとガラス窓の上から先輩にキスをした。月が私たちを照らしていた。
唇を離したとき、私の目からは涙がこぼれた。
先輩、私、ずっとこんな風にしたかったんです。先輩に、こんな風に・・・。
つづく