ただでさえナナコにはニャン太の世話は荷が勝ち過ぎた。
ナナコには朝起きるとすぐに、食事の用意をしたり、ツトムを起こして学校へやるなんていう大事業があったし、それが終るとすぐに、自分も仕事へ出掛けなければならなかった。
だからネコの世話までしていられなかった。
代わりにマメにネコのトイレをキレイにしたのは、夫のリョーヘイの方だった。
リョーヘイは当初、ネコを飼うことに反対だったし、ネコが来ても絶対に世話などしないと公言していたが、実際にニャン太が来てからは、お風呂にも一緒に入ったし、猫砂も「ちゃんと掃除しろよ」などとブツクサ言いながらも、自分でキレイにしていた。
しかし一番可愛がったのは、なんと言っても息子のツトムだっただろう。
ツトムは毎日学校から帰ってくると、ニャン太を外へ連れ出しては、一緒に遊んだ。
ツトムの友達たちも一緒になって、この小さな生き物を可愛がった。
夕方になり、ナナコが帰ってくる頃になると、ツトムは居間にあるテーブルの側で胡坐をかき、その膝の上にニャン太を乗せると、耳を綿棒で掃除してあげているのだった。
そうして、半年も経たないうちに、ニャン太は立派なオスネコになっていった。
大人になったニャン太は、腕が太く、お腹周りも堂々としていたが、いかんせん、顔が小さく、尻尾は相変わらず短く曲がっており、全体的にバランスが悪かった。
他のオスネコに比べると、若干小さめだったが、それは産まれたときに、母親からオッパイをたんと貰ったか貰わなかったかで、成人したときの大きさが決まるからと言うことだった。
ただし、これはお向かいの庄田さんからの情報なので、当てにはならないが……。
野沢家の面々は、以前庄田さんが、「これはメスだね」と、堂々と間違った性別を自信を持って宣言して以来、何となく庄田さんの話は、話し半分で聞くようになっていた。
だが、庄田さんにそう言われたとき、ナナコはなんだか納得できるような気がした。どうせニャン太のことだ、産まれた時から、他の兄弟たちにオッパイをとられ、一番下になってミャーミャー鳴いていたのではないか。
ニャン太を見ていると、ナナコはどうしてもそんな情けない姿しか思い浮かばないのだった。
つづく