トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」20

 ある夜、また台所から明かりが漏れていた。

 ナナコがドアを開けてみると、目が据わり赤い顔をしたリョーヘイが、日本酒をちびりちびりと飲んでいた。片方の足を別の椅子に乗せてだらしなく座るその姿は、まるで赤鬼のようだった。

 

「……」

 

 あまりの変貌ぶりに、ナナコは思わず息を呑む。リョーヘイは普段はとても穏やかな青年なのだ。ナナコに言わせると、無気力とも思えるくらいだった。それが今や、何とも言えない猛々しい空気を纏っていたのだ。

 

「眠れないの?」思い切って、ナナコは声を掛けてみた。

「……」

 

 リョーヘイはこちらを見ようともしなかった。

 しばらくして、顔が動くと、フンと鼻で笑った。

「眠れないかって? 当たり前じゃないか。側でグウグウ寝ている誰かさんとは違うんだよ」

「……」

 

 その言い方があまりに冷たかったので、怖くなったナナコは、そのままピシャリとドアを閉めた。だが、胸の動悸はなかなか治まらなかった。

 翌朝、酔いの醒めやらぬリョーヘイをなんとか起こし、夕べのことを問い質してみるが、リョーヘイは何も覚えていないのだった。

 

 ツトムが産まれてからも、リョーヘイの不眠症は治らなかった。しかし、それが毎日ではないので、ナナコも日々の子育ての忙しさに紛れて忘れていた。

 

 いや、本音では見ないようにしていたのかもしれない。不眠を増長させるお酒を奪われることが辛かったのかもしれない。ナナコ自身もビールが好きで、一日の終わりにはビールを一缶開けるのを楽しみにしていたからだ。

 

 だが、リョーヘイは、一缶だけでは足りずに、眠れないからという理由でそのあとも日本酒、ウィスキーと飲み続けるのだ。そうして、その量は、年々増えて行った。最近では、いつも最後には真っ赤な顔で、倒れるようにして布団に入るのが常になっていたのだった。

 

 

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つづく