トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」22

 そんなある週末のこと、ナナコが外出先から帰ってくると、珍しくリョーヘイが起きていた。そして、

「ったく、うるさくて、寝られやしない」とぼやいた。

「どうしたの?」とナナコが尋ねると、

あいつだよ」そう言って、リョーヘイは腹立たしそうに天井を指差した。

 

 なんでも、リョーヘイが寝ていると、二階で規則正しい物音がしてきたのだという。それと同時に天井も揺れ始めた。何事かと思っていたら、どうやら二階の住人は、身体を鍛えるために、運動をし始めたようだった。腹筋運動、腕立て伏せ……それらの規則正しい息づかい、動き、物音、それにあわせた天井の震える音などが、一気に寝ていた

リョーヘイの顔に迫ってきたらしい。

「それで俺、あんまり頭にきたんで、二階に文句言いに行って来たんだよ」 

「ええッ!?」とナナコは、驚いた。

 確かにうるさいが、それは生活音の範囲内で、とても文句を言える程のものではないと思っていたからだ。それに、隣近所とはなるだけトラブルを起こさずにいたかった。

「でも、話せば分かる奴だったよ。“すみません”って謝っていたから」リョーヘイはナナコのそんな思いなど全く意に介さずに言った。

「だからこれからは静かになる筈だよ」 

「……」

 そう言い切る夫の表情のない顔に、ナナコは少なからず不安を覚えた。

 リョーヘイは他人に対して文句を言いに行くというタイプではないのだ。どちらかと言うと大人しくて我慢をしてしまう方だった。

 それが、今や気に入らないからと言って、わざわざ相手の家へ押し掛けて行くなんて……。ナナコは夫の変化に戸惑いを感じていた。

 

つづく

 

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☆それでは今日もよい一日を。