トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」25

 その夜、帰ってきたリョーへイに、ナナコは新聞記事を差し出した。

「もしかすると、アルコールも、薬で治るかもしれないよ。一度お医者さんへ行ってみない」

 その場で立ったまま記事を読んでいたリョーへイは、読み終わってからもしばらく考えている様子だった。

「……」

「ねぇ、もし薬で治るなら、楽だよ。ほら、入院とか、断酒とかしなくてもいいんだもの」

「……」

「ここは、田舎じゃないんだから、精神科って言っても気軽にいけるし。第一アメリカなんかじゃ当たり前のことじゃない?」

 リョーへイの口から小さく溜息が漏れ聞こえた。

「そうだな、一度行ってみるかな」

 しめた! とナナコは思った。そして間髪入れず

「どうする? 精神科って言っても、心当たりはある?」と聞いた。

 ナナコは駅前の病院を片っ端から思い起こした。だが、精神科の看板を掲げている病院は思い当たらなかった。どうしようかと悩んでいると、リョーへイが思い出したように言った。

「そう言えば、会社の近くに精神科があったな。あそこなら、近いし、そこへ行ってくるよ」

「そ、そう?」

 ナナコはホッとした。意外にもリョーへイがすんなり引き受けてくれたのにも驚いたが、その表情が穏やかな事にも気がついたからだ。

 だが、そうと決まったら、善は急げ、だ。畳み掛けるようにして、

「いつ、行く?」と尋ねた。

「そうだな……」

 しばらく躊躇していたリョーへイだったが、

「明日にでも行ってくるかな」と答えた。

「そう」

 ナナコは、ようやく安心した。これでリョーへイを悩ませていたアルコールの問題は解決する、そう思ったのだ。

 

 だが、嬉しそうなナナコとは反対に、リョーへイの顔は、蛍光灯の明るい灯を背景に、青く鈍く光っているようだった。

 

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つづく