ところが、しばらくは大人しかったリョーヘイのあれが、再び、深夜、現れるようになった。
ドシン、ドシンとボールを天井に投げる音。そしてそれに続く罵声―。
慌てて起き上がったナナコは、リョーへイの口を押さえたが、リョーへイは抵抗した。「ンーンー」と言いながら、イヤイヤをするように大きく首を振ると、ナナコの手を払いのけようとした。
そしてそれが無理だと分かると、今度は馬乗りになって押さえつけているナナコの身体の下から、何とか逃れようともぞもぞと動き始めた。
リョーヘイが動くとナナコの身体も大きく揺さぶられる。身体の大きな男が一度暴れ出すと、どうにも手がつけられない。ナナコは自分の非力さを思い知った。
そうしてその日から、リョーヘイの力が尽きるまで、毎晩のようにナナコはリョーヘイの身体に乗って押さえつけていなければならなくなった。
しかも近所迷惑にならないように、声は出さずに、無言のままでやらなければならない。
激しく抵抗するリョーヘイの身体を右へ左へ追いながら、それは時には半時間以上にも及ぶ格闘となった。あまりにも疲れている時は、ナナコはいつの間にかリョーヘイの身体の上で眠ってしまうという事もあった。
ようやく静かになると、ナナコは深い溜息をつく。そしてリョーヘイの身体から身を起こすのだが、いつの間にか全身からは汗が噴き出しているのだった。
「……」
そうして、痛む腕を気にしつつ、自分の布団へ滑り込むのが常だった。
つづく