踏んでも蹴っても叫んでも、どんなにナナコがアクションを起こそうが、リョーへイは岩のように頑として動かない。
ナナコは泣きそうになった。
一体、どうしたらこの人の心に届くのだろう。
何をどうしたらこの人の心は開くのだろう—。
そんな絶望的な気持ちになった。
やがてその思いが、憎しみへと変わったのだろうか、思わずナナコの蹴る力が強くなる。
すると、「痛ッ!」と突然リョーヘイが声を荒げた。
「痛いじゃないかッ、テメェ」そう言うと、布団から顔を出したリョーヘイが睨んでいた。
だが、ここでナナコも負けてはいられなかった。怯む気持ちを押さえながら強気で言った。
「早く起きてよ、もう昼だよ。ドライブに間に合わなくなっちゃうよ」
そう言うと素早く部屋を出た。これ以上居ると危険だった。
「うっせーな……」とまだ寝ぼけた声でぶつぶつ文句を言っていたリョーヘイだったが、ようやく寝室からは起き出す音が聞こえてきた。
つづく