受話器の向こうから、ハキハキとした女性の声が聞こえてきた。
「はい、一一〇番です。どうなさいましたか?」
ナナコは息を呑んだ。そして叫んだ。
「早く、早く、来てくださいッ! 夫が、夫が、暴れているんですッ」
パトカーが到着する間、ナナコはパジャマを着替えた。
そしてリョーヘイを追って外へ行こうとした時、もう我慢ならないといった感じでツトムが布団から飛び出してきた。
「お母さん、お父さんどうしたの?」
その顔は不安で一杯だった。
「……」
ナナコはツトムのその頬を撫でた。
「また酔っ払ったから警察を呼んだの。でも大丈夫だからね。寝てなさい」そう言うと、外へ出た。
つづく