ナナコは慌てて、リョーヘイの後を追った。そして、ドアノブに手を掛けているリョーヘイに後ろからしがみついた。
「お願い、止めて……」
しかし、ナナコがしがみつけばしがみつくほど、リョーヘイは面白がって身体を解こうと揺り動かす。そして、しっかり食い込んでいるナナコの指の一本一本を剥がしていった。
「痛い、痛い」思わず叫ぶが、まるで子どもがおふざけでもしているかのように、リョーヘイは面白そうに剥がしていく。やがて最後の一本が剥がされると、リョーヘイは裸足で外へ飛び出していった。
「やったー! やったー!」と雄叫びを発しながら―。
ナナコは青くなった。どうしよう……。もうリョーヘイを押さえられない。近所の人にも迷惑が掛かってしまう……。
ナナコは急いで部屋へ戻って受話器を取った。そして迷わず一一〇番をした。それは前からリョーヘイには宣告しておいたものだった。
「もし、今度あなたが暴れたら、警察を呼ぶからね。いいわね」
その時、リョーヘイは、「ハ?」という顔をしたものだが。まさか脅しのために使ったこの事が現実になるなんて……とナナコは思った。
まさか我が家が警察沙汰になるなんて……。
つづく