日曜日―。
一家はドライブに出掛けることになった。ナナコは天気のよい日には、必ず外へ出たがったが、お酒の切れないリョーヘイは、昼過ぎにならないとなかなか起きては来なかった。
それは前日にいくら約束をしてもダメで……。
だから週末になると、酒が原因でよく二人は喧嘩になっていた。
その日は、朝から台所で、ナナコは大きな音を立てながら、弁当を作っていた。
空は快晴だった。
今日こそはみんなでドライブを楽しもうと思っていた。
前の晩にリョーヘイにはそう言い置いていた。それに、外へ出ることは、リョーヘイにとっても、いい気晴らしになるはずだとナナコは考えていた。
ナナコはナナコなりに、何とかリョーヘイの鬱々とした気持ちを晴らしてやりたいと思っていたのだった。
おにぎりを握りながら、寝室へ声を掛けると、ツトムは起きて来たが、リョーヘイは相変わらず起きなかった。
卵を焼くフライパンをわざとガンガン音を立てながら、ナナコは無言のアピールを開始した。
早く起きろー! 起きて来い! でないと、煮て、焼いて、喰っちまうぞー。
しかし、弁当が出来上がっても、リョーヘイは起きる気配がなかった。
ナナコは頭に来てしまった。
あれだけ約束したのに、リョーヘイはまた約束を反古しようとしている。
私との約束を—。
家族との約束を—。
そう思うと、ナナコは胸が潰れそうになった。
「……」
すでに行く用意の出来ているツトムは、さっきから退屈そうにテレビばかりを見ていた。
この時間帯には政治談義しかやっていないと言うのに……。
つづく
*明日から、お昼の12時に配信いたします。