ニャン太はご飯を台所で食べ終わると、いつものように椅子の上で毛づくろいを始めた。
「そう言えば」ふと気づいてナナコは、リョーヘイに言った。
「夕べ、ニャン太はあなたの側をずっと離れなかったのよ。あなたが酔っ払って、二階の人のドアの前にいた時に」
「ふ~ん」と興味なさそうにリョーヘイは生返事した。
「階段を下りるときも、ずっと心配そうについてきていたのよ」
「……」
リョーヘイは返事をしなかった。誰もが、ナナコでさえももはやリョーヘイを見放していたのに、ただ一匹、ニャン太だけは心配そうにリョーヘイの周りをウロウロしていたのだ。
けれどリョーヘイは、そんなニャン太に靴を投げて追い払っていたっけ―ナナコはそんなことを思い出していた。
しかし、ナナコの話に、リョーヘイはさほど関心がないようだった。
つづく