しかし事態はそれだけで終わらなかったのだ。
夕方になると、決まって金田が家へやってくるようになったのだ。
ナナコはリョーヘイからきつく言われていたので、金田がいくら請求書を持ってきてもガンとして受け取らなかった。
「いえ、主人が居る時にお願いします」とか、「主人が帰ったら、お話に行くと思います」などとのらりくらりと交わしていたのだが、一向に埒が明かないことに業を煮やした金田は、時間を見計らっては毎日来るようになってしまった。
ナナコもこれには参ってしまい、リョーヘイに早急になんとかして欲しいと頼むのだが、「分かった、分かった」と言うだけで、何もしない。
仕方がないので、ナナコは金田が来ても居留守を使うようになってしまった。
だが、電気がついていてもドアを開けない明らかなシカトに、金田は心底頭にきてしまったようだ。
チャイムだけではなく、ドアをドンドンドンドンと力いっぱい叩くようになっていった。それでも出てこない時には悪態をつき始めた。
つづく