ナナコはいつも疲れていた。
眠っても疲れはとれず、朝は起きられなかった。
時々背中に背負っている全ての荷物を放り出し、自由になりたいと思ったが、それは叶わぬ夢だった。
その頃になると、ナナコは自分のために休みを取るようになっていた。
今までは子どもの学校行事、病気の時以外では仕事を休んだ事はなかったが、どうしても気力が出ない時には、子どもが病気でと言い訳して休んだ。
そんな時は何もせず、ただ一人布団の中でじっとして天井を見詰めた。そして、全てはここから始まったのだと思った。
この天井から聞こえてくる足音で、全てが狂ってしまったのだ。けれどそれは単なるきっかけに過ぎなかった。
ナナコとリョーヘイは、それ以前からも上手くはいっていなかったのだ。
ナナコには、リョーヘイが家族から心を閉ざし、酒に逃げているようにしか見えなかった。それが歯痒かった。
一体、いつになったら、父親らしく、夫らしくなってくれるのだろうといつも思っていたのだ。
「……」
ナナコのポッカリ空いた心の中は、虚しさで一杯、容易に埋まりそうになかった。その時、アパート脇の道路にトラックが通りかかり、床が揺れた。
早くここから出たい、ここではないどこかへ行きたい、そして、もう一度、やり直したい、消え去りたい……そうため息をつきながら、やがてナナコは眠りに落ちていくのだった。
つづく
※ 暑い、暑い~(*´Д`)