トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」106

お姫さまはとうとう泣きだしました。泣き声はだんだん高くなるばかり、どうしてもあきらめがつきませんでした。ところが、こうして泣いているとき、だれかよびかけるものがありました。

 「どうなさろうというのです、お姫さま、そんなにひどく泣いて。心ない石でも、おかわいそうにおもいましょう。」

グリム童話集1「カエルの王さま」より(相良守峯 訳/岩波少年文庫

 

 

 

 もう一度

 

半年後、一家は戸建てへ引越した。

それは念願のマイホームだった。不思議なもので、探している時には見つからずに、諦める段になると不意に出てくるものだ。ナナコはもう無理だろうと思いながら、最後に入った小さな不動産屋でその物件に出合った。

 

ちょうど競売で競り落とされたばかりの中古の建売りだった。見に行ってみると、今住んでいるアパートの近くで、何度もその前を通っていたにも係らず気がつかなかった。前の持ち主が二年くらいで手放したものなので、まだ新築と言ってもいいくらいだった。

 

そして中に入って驚いた。玄関へ入るなり突然ふわっとした空気に包まれたのだ。それはまるで、「いらっしゃい、待ってましたよ」と言わんばかりだった。

 

「……」

 

それまで幾多の物件を見たナナコだったが、そんな感覚を受けたのは初めてだった。もうそれで決まりだった。だが、まだ家には最大の難関、リョーヘイが待っていた。リョーヘイは未だに「家なんて」と言っていたが、無理やり呼び出して見てもらうと―

 

「……」

 

リョーヘイも何かを感じたようだった。何より周りが静かなのが気に入った。彼の神経には、もう“音”というものは一切受け付けなくなっていたのだ。

 

初めて自分の部屋が持てるようになったツトムも大喜びだった。だが、夕食時にポツリと言った。

 

「ニャン太は新しい家が分かるかな?」

 

「……」

 

 

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つづく