ナナコは、よく仕事が休みになると、昼間でも薄暗い台所の椅子の上で、手足を広げて大の字になり、腹を見せながらいぎたなく寝ているニャン太を見下ろした。
他のオスにやられたのだろうか、いつの間にか鼻の頭には、しっかりと引っ掻き傷が作られていた。体の小さなニャン太にはケンカなんて不利だろうに、それでも立ち向かってゆくその勇気にナナコは誇らしさを感じていた。
いつの間にかニャン太も立派なオス猫になっていたのだ。その急激な変化に戸惑いと、そしてほんのちょっぴり、頼もしさも感じながら、ナナコは飽きることなく、ニャン太を見つめていた。
だが、それにしても……とナナコは思った。
舌を半分出しながら、椅子の上からずり落ちそうになってもまだ目を覚まさない、そのだらしない寝姿が、何かに似ていると思ったのだった。
しばらく考えてから、ようやく思いついた。
そうだ、オヤジだ!
ニャン太の寝姿は、ステテコの上に腹巻をしてだらしなく寝入っている人間のオヤジの姿にそっくりだったのだった。
つづく