トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」38

オノと名乗るその老婆は、お宅の猫が家の台所へ時々忍び込んでは、生ごみを漁ったり、酷い時には、焼いた魚なども浚って行くのだと淡々と文句を言った。ナナコは驚き恐縮した。

 

まさかニャン太がそんなことをしていたとは……。

 

ナナコは、ひたすら頭を下げた。

 

確かに最近、ニャン太はすっかり家には寄り付かず、もっぱら外での生活を楽しんでいるようだった。夕食が終わると、外へ出せと玄関前でニャーニャー鳴き、ドアを開けてやると明け方まで帰ってこなかった。

 

時々鼻の頭に引っかき傷を作ってきていたので、激しい縄張り争いをしているのだろうとは容易に想像できたが、元々体の小さいニャン太が、他のオスたちに負けじと身体を張っている様子は、逆にいじらしく、頼もしい気すらしていたのだ。

 

ウンチもどうやら外の畑で済ましてくるらしく、トイレの砂も汚れなくなっていた。だから、最近ではご飯と水さえあげていればよくなった。ニャン太は今ではまったく手の掛からない、半野良状態の猫になりつつあったのだ。

 

頭の隅では、もしかすると、どこかで悪さをしているのではないかという恐れもあったが、それよりももうニャン太の世話をしなくていいという喜びの方が大きかった。ただでさえ夫に悩まされているのだ。もうこれ以上、手の掛かる子どもを引き受けたくないというのがナナコの本音だった。

 

だから、オノからニャン太の行状を切々と述べられるとぐうの音も出ずに、ただ頭を垂れるしかなかったのだった。

 

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つづく