トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

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「ニャン太を探して」47

なぜ医者は、アルコールではなくて、うつ病の薬を出すの?


ウチのリョーヘイの問題はアルコールなのよ、とそう医者に問うてみたい気がした。

一緒に病院へ行ってみたい、と一度ナナコはリョーヘイにそう切り出してみたことがあった。

すると、そこにナナコの並々ならぬ決意を感じ取ったのか、リョーヘイは、「いや、いい、俺一人で行くから」と断った。

ナナコが来て、自分と医者との信頼関係に水を注されるのが嫌だったのだろう。

 

「そう……」とナナコは鼻白んだ。

 

だが、少しホッともしていた。

 

「それなら、ちゃんと、アルコールが止められなくて、困っているんだって、伝えてよね」と釘を刺した。

 

「分かった」とは言うものの、果たしてどの程度リョーヘイは真剣に受け止めてくれたのか。はなはだ疑問なのだった。

 


リョーヘイは、二週間に一度、定期的に病院へ通っていた。薬もきちんと飲んでいた。あとは❘そう、アルコールを止めればいいだけだった。


精神科の薬とアルコールを重ねて飲むリョーヘイは、アルコールだけだった時よりも酷かった。

それまではアルコールが入ると、布団に倒れ込んで寝るだけだったが、今では、夜中の十二時を過ぎると、突如として獰猛な人格が現れてくる。


それはナナコに子どもの頃読んだ『ジキル博士とハイド氏』を思わせた。

同じ人物とは思えないほどの変貌ぶりだった。

 

そして、今では一体どちらが本物のリョーヘイかよく分からないくらいだった。

 

ナナコはずっと、“リョーヘイ”という温和な仮面を被った男と、その正体を知らずに結婚してしまい、騙され続けてきたような気さえしていた。

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つづく