約束の日。
ナナコは早めに仕事を切り上げて、リョーヘイと一緒に病院へ向かった。
待ち合わせの改札で、電車から降りてきたナナコを見るなりリョーヘイは、「ほんとに行くの?」と不安気に尋ねた。
「当たり前でしょ!」とナナコは意気込んだ。
今日こそは真実を、本当のことを知りたいのだから。
狭い待合室はたくさんの人でごった返していた。
その多くは顔色が悪く、目には精気がなかった。
それは長時間待たされているから❘というものではなさそうだった。
受付でリョーヘイは「今日は妻も一緒でいいですか」と聞いていた。
なんだよ、話してもいなかったのかよ、とナナコは少しがっかりした。
どれくらい待たされただろうか。
身動き一つ取れない待合室の丸椅子に、じっとしているのがそろそろ限界に近づいてきた時、ようやく名前を呼ばれた。
ナナコはリョーヘイに促され緊張しながら診察室へ入った。
「―!」
しかし、そこに居たのは、まだ年若い女性の医師だった。
茶髪の長い髪の毛を後ろにキリリと縛り、背が高く手足が伸びやかなその身体を白衣が包んでいた。そしてその白さが一層彼女の肌のきめ細かさを際立たせていた。
てっきり男性医師だとばかり思っていたナナコは驚いた。
そして、急にその場にいるのが気恥ずかしくなってしまった。
それは、同じ女性として圧倒的な華やかさに凌駕されたからだろう。
ナナコは自分が惨めに思えた。
つづく
↓友達からもススメられました!
今迄こんな事言う人じゃなかったのに…!?
あの国発症…というところが、リンクしたのでしょうか?
頭の片隅には入れておいた方がいい本です。
☆それでは今日もよい一日を。