ナナコはその場に倒れそうになった。
せっかく連れて行ってもらおうと思ったのに。
ようやくこいつと別れられると思ったのに。またこんな化け物と一晩過ごせって言うの?
ナナコが呆然としていると、玄関で殊勝に正座していたリョーヘイが、突如として駐車場へ踊り出てきた。
「―!?」
ナナコが驚いて見ていると、リョーヘイは走り去るパトカーに向かって大きくアカンベーをして、親指を突き出すと、それを思いっきり下へ向けた。
そして、「やったー、やったー、ザマアミロー」と手を叩いて喜んだ。その姿を見ながらナナコはもう何も言えなかった。
警官もナナコもリョーヘイにすっかり騙されたのだ。
リョーヘイの勝利だった。ナナコは力なくその場に立ち尽くすしかなかった。
つづく