仕事からの帰り道、菓子折りを買って戻ってくると、リョーヘイが道を横切ってアパートへ向かってくるのが見えた。
「会社行ったの?」ナナコが驚いて声を掛けると、「当然だろ!」と怒ったように答えた。
「―!?」
意外だった。
夕べはついにパトカーまで呼ぶ騒ぎになったし、それに朝のあの様子ではとても仕事に行ったとは思えなかったけれど……。
それでも行ったということは、少しは反省している証拠なの? そんな思いがナナコの頭の中を駆け巡ったが、何よりナナコを驚かせたのは、久しぶりに外で見たリョーヘイの顔が、どす黒く濁っていた事だった。
リョーヘイはしばらく見ないうちに、随分人相が悪くなっていた。
まるで人を疑うような、捕った獲物をとられまいと一人で抱えて込んで食べているような、そんな猿山の猿を思わせる目付きになっていたのだ。
「……」
ナナコは思わず目を伏せた。
つづく